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 神様は生きて働いている-「野球の神様はいるんですね」

「野球の神様はいるんですね」

日本ハムファイターズ栗山英樹監督が日本シリーズの第5戦でシリーズ不調だった西川選手が逆転のサヨナラ満塁ホームランを放ったのを見た時、そんな感慨になったといわれていた。

テレビ番組のゲストとして出演された栗山監督は、南原清隆氏との対談において、今シーズンの監督采配の内側を披歴されていた。その内容は、傾聴すべきすばらしい内容であった。

栗山監督が野球に取り込まれている姿勢は、野球の神様が働きやすい状況を作り出している。

監督として権威をもって選手をまとめるのではなく、チームの目標に向かって、いかに選手を生かすかに精力を注がれている。その方法はとてもすばらしいものである。

 

 (1)自分の流儀を押し付けない

リーダーになると、自分のビジョンでまとめるということが目標になる。それはともすれば、自分の流儀を押し付けることになりかねない。ビジョンを実現するためには、チームの一人一人の協力が不可欠である。ビジョンを納得して、自発的にその目標に向かって一致団結していくというステップが欠かせない。それを強引に引っ張っていこうとすると、チームの中に不協和音が生じてくる。不満、反発、惰性が支配するようになってくる。こうなると、もはや活力は生み出されていかない。日本のスポーツ界・組織のマネジメント・指導方法は、この押し付け型に近いものが多いとされている。押し付け型は、チーム内の一人一人の意欲と創意工夫を削ぎ、個性の乏しい一様な組織を作り出しかねない。日本の弱点は、この組織マネジメントにある。この風土を改善するためには、リーダーが変わらないと無理である。

リーダーが明確なビジョンをもち、ビジョンを一人一人に説明して共通のビジョンにすること、そしてリーダーが親分風を吹かさないことが大事である。リーダーもチームの一員である。統率の役割を託されてはいてもそれほど特別な存在ではない。リーダーは筋を貫く一方で謙虚でないといけないのである。

 

 (2)選手を信頼する

どんなリーダーも選手を信頼するというが、選手を信頼するということはどういうことだろうか。ともすれば、リーダーの独りよがりの場合が多い。このことは、選手の側から考えるとわかりやすい。選手は、リーダーは私のことをわかってくれていると感じるとき、はじめてリーダーとの間に信頼感が芽生える。要は、選手一人一人をよく理解してあげるということが出発点である。理解しあえて初めて信頼感が芽生える。一人一人から見れば、リーダーとも1対1の関係である。この基本を忘れてはいけない。選手から見れば、わかってくれているということが大きな安心感であり、モチベーションとなる。リーダーが自分本位に選手を信頼するのではなく、選手が信頼されているという環境を作り出すことが成功の秘訣である。

栗山監督は、日々の選手との交流において堅い信頼関係を築かれているようだ。

 

(3)楽しく野球をやっていない。個々の能力をいかに発揮させるか。野球を心から楽しんでいるか。選手のことを真剣に思うから智慧がわいてくる

栗山監督は、大谷翔平選手がシーズン初め投手に専念していた時、楽しそうに野球をやっていない。なぜなのだろう。どうしたらいいのかと自問していたそうである。日々選手の状況を観察しているからこそ感じたことだろう。大谷選手への解答は、「リアル二刀流」だった。この選択はものの見事にはまった。大谷選手のその後の活躍は、誰の目にも焼き付くものとなった。そして一番ピッチャー大谷という今までにない奇抜な選手起用は、先頭打者ホームランとなって球史に残るものとなった。選手がいかにしたら輝くか、そのことを追求した結果が最高の形で結果として現れた。

人を活かすとは、チーム内の一人一人をいかに輝かせるかにかかっている。それこそ、リーダーに求められる資質である。誰もが才能をもっている。誰もが輝きたいと思っている。その気持ちを汲みわかってあげ、活かす道を示すことができれば、チームが生きるのである。そして、与えられた人材を最高の形で活かしたならば、神の導きによって最高の結果がもたらされるのである。

 

(4)苦言・厳しい𠮟責・処遇は、相手が納得して受け止めて初めて効果がある

栗山監督は、不調に陥った西川選手には一時二軍行きを命じ、打撃不調の中田選手の二軍行き申し出には、「そこに逃げたらだめだろう」と4番継続を命じたという。チーム内の選手が苦しい状況になった時、どのように対処すべきかはリーダーの大きな腕の見せ所である。厳しい叱責・処遇が必要な時、それを行うためには普段から築かれた信頼関係が欠かせない。選手以上に選手のことをわかっているという、選手からすればわかってもらえているという関係が築かれていないと厳しい叱責は効果をもたらさない。厳しい叱責・処遇は、される選手自身が納得して受け入れてはじめて効果をもつものである。監督権限として一方的に叱責したりしても、それは裁いたようになり、しこりを残すことになりかねない。下手をすると、その時の言葉が尾を引いて関係の修復が困難になる。そしてチームがバラバラになる。

中田選手は、栗山監督と話し合う中で監督の気持ちを理解し気持ちが吹っ切れて、その後4番として大活躍していくことになった。

 

(5)一つにまとまれば道が開ける

どんなスポーツでも、チーム全員の気持ちを一つにして試合に臨むために円陣を組むなりして気持ちをまとめようとする。このことは、スポーツだけではなくどの組織においても日常行われている方法である。苦境にあればあるほど、気持ちがバラバラになりやすい。そんな時でも、みんなの気持ちが一つにまとまれば道が開かれて来る。智慧が出て解決策が浮かび、全員が全力で臨む中に最善の結果がもたらされる。よくスポーツで「みんなが一つになった結果です。応援ありがとうございました」という談話がされているが、一つにまとまることは信じられない秘密の力を引き出すのである。一つになることは「神様がはたらく条件を創り出す」ことなのである。

 

テレビ番組の栗山監督の話を聞きながら、「栗山監督はすでに名監督である」と感じた。野球の神様の導きを引き出せる術を会得されている。一ファンとしてこれからの采配を期待して応援していきたい。どんな選手が育つのか、どんなチームができるのか、興味は尽きない。