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「易経」が教える循環と苦難への対処(1)

誰でも「当たるも八卦、当たらぬも八卦」という言葉を知っていると思います。易占いは、筮(ぜい)を立てて得た卦を使って、今起きている問題への対処法を知る方法です。一方「易経」は、人生で起こるあらゆる場面の解決法<陰陽の組み合わせによる64種類の卦と384の小話を使って>が書いてある書物です。(「易経」では、解決法のことを「中する」といいます。)

易経」について、竹村亞希子さんの著書をもとにかいつまんで苦難への対処についてまとめてみました。

易経には、人生に起こるさまざまな状況を一つの卦として、64の物語が書いてあります。「卦辞(かじ)」と「爻辞(こうじ)」です。

最初の卦は、陰陽の陽を象徴する「乾為天(けんいてん)」、次に陰を象徴する「坤為地(こんいち)」です。次に、陰陽が交わって一つのものごとが生れるという考えに基づき、産みの苦しみの時をあらわす水雷屯(すいらいちゅん)」となります。その次は、「啓蒙の時」をあらわす「山水蒙(さんすいもう)」の卦になり、最後から二番目に「完成の時」を意味する「水火既済(すいかきさい)」、そして最後に「未完成の時」をあらわす「火水未済(かすいびせい)」の卦が置いてあります。最後が未完成に終わっているということは、時の変化に終わりはなく永遠に循環していくということを表しているのです。

    f:id:higurasi101:20151124190746p:plainf:id:higurasi101:20151124190810p:plain        f:id:higurasi101:20151124190931p:plainf:id:higurasi101:20151124190950p:plain              f:id:higurasi101:20151124191108p:plainf:id:higurasi101:20151124191144p:plain             f:id:higurasi101:20151124191258p:plainf:id:higurasi101:20151124191643p:plain

1、乾為天     2、坤為地    3、水雷屯     4、山水蒙  

       f:id:higurasi101:20151124191918p:plainf:id:higurasi101:20151124191934p:plain                      f:id:higurasi101:20151124192011p:plainf:id:higurasi101:20151124192045p:plain                   f:id:higurasi101:20151124192129p:plainf:id:higurasi101:20151124191144p:plain              63、水火既済         64、火水未済     25、天雷旡妄

易経」は、状況は変わっても人間は同じように問題に突き当たり、ものごとの成否はおおよそ人間の取る行動によって成行が決まっていると説いています。「易経」には、「典要となすべからず、ただ変の適くところのままなり」と書いてあり、決めつけたり頭を固くしたりせず、固定観念を捨てて時や状況とともに自分自身を変化させて適応していくことが重要だと説くのです。

易経の「易」は十二時虫と呼ばれる蜥蜴(とかげ)から来ています。光の変化によって一日に十二回体の色を変えるということから、変化を意味しています。「経」は理(ことわり)ですから、易経は「変化の理」について書いてあるという意味をあらわしています。現在伝わっている「易経」の本文は、周の文王とその息子、周公旦によって記された「周易」です。

周易』には経と伝の二つの部分があり、伝統的な言い方で言うと、伏羲が八卦を作り、文王が六十四卦として、卦辞・爻辞(こうじ)を作り、孔子が十翼すなわち「易伝」を作ったとされています。孔子が『易伝』を作ったという記述は、司馬遷の『史記』に見えるのですが、孔子が十翼を作ったということは疑問視され、近世の学者の研究によると、卦辞と爻辞は殷周の際の作、十翼は戦国時代の末に作られ、かつ一人の手によってできたものではなく、孔子の手によるものでもないとされています。

 

64卦の中で、「天雷无妄(てんらいむぼう)」は、最も易経の教えを表している卦で、64の卦のうち、これだけは「どうすれば問題が解決するか」の具体的な対処法が書かれてなく、「身をすべて委ねよ」と教えているようです。竹村亞希子さんは、2011年の東日本大震災の時、この卦「天雷无妄(てんらいむぼう)」がとっさにひらめいたといわれています。

易経」は、時の変化の兆しを感じ取ることが重要だと教えています。目に見えないが、実際にものごとが起こる前にはかならず兆しがあるので、それを感じ取ることが大切だというのです。そして、易経が語る時にぴったり合った行動を取ることが大切なのです。(これを「時中」という。)

ところが人間はなかなか時を感じ取れません。特に「吉」の時は驕り高ぶってなかなか改めることができません。「大吉は凶に転ずるから危ない」とは、このことを言っています。

「震(うご)きて咎无(な)きものは悔に存す」(易経)とは、背中が震えるような恐れ震えるような思いをしないと、人は改めないものだという意味です。震えが人を正常な感覚に戻し、凶を吉に、或いは凶に至る前に未然に転換させるのです。心の中に芽生えた傲慢さや、惜しむ、けちるという吝(りん)の兆しを察知することが大切だと教えるのです。

 

(1)十二消長卦(陰陽の消長をあらわす十二の卦)

一年の変化を陰陽の消長で表したのが、十二消長卦です。陰陽のグラデーションのようになっています。64卦の感覚がわかるのではないでしょうか。各月のこまかい説明は、下記のウェブより転記しました。占いでは、このように説いているようです。暦は旧暦です。

http://yamame.chobi.net/64_setumei.htm#2

 

4月 f:id:higurasi101:20151124192129p:plainf:id:higurasi101:20151124192129p:plain  乾為天(けんいてん) 「健やかな成長の時」 陽のピーク、裏側に陰が隠れている。

常人には荷が重い

剛健で盛運だが、責任も重く緊張も絶えない状態。実力のある大物には吉でも、常人には重圧になる。位負け。父。君主。権力。大金。厳しさ。険しさ。たかぶり。対人関係においては奢りが窺え、成立しても凶のことが多い。身の程に応じて控えめにすること。無理をすれば、どちらかが傷つくし、このまま進めば離別もある。

5月   f:id:higurasi101:20151124192129p:plainf:id:higurasi101:20151124192658p:plain  天風(てんぷうこう)夏至>「思いがけなく(陰に)出遭う時」 夏至を境に陰が勢力を伸ばしてくる。  

出合う
思いがけず遭う。奇遇。奇禍。災い。だます。女難。変事。発病。衰運のはじまり。 とは偶然の出会いのこと。好色女に騙される。卦の形はひとつの陰爻(女性)が5本の陽爻(男性)を集めて、女王のように魅惑している。女性にはいいが男性には望ましくない卦。関係は一定しない。かりに内縁で一度は成っても遂げず。

6月 f:id:higurasi101:20151124192129p:plainf:id:higurasi101:20151124191258p:plain 天山遯 (てんざんとん)「逃れる時」 二本の爻が陰になり、陰が着実に勢力を伸ばす。

自分から逃げる
遯は逃げること。遁走。自分から退く。見切りをつける。引退。家出。運気が逃れて時勢が味方しなくなった。今までの力を頼りに無理をすると危険に陥る。さっさと退いてこそ道が拓ける。チャンスが巡ってきたらまた積極策を講じればいい。相手から望まれても気が進まないなら消極策をとること。自分から逃れて吉。

7月 f:id:higurasi101:20151124192129p:plainf:id:higurasi101:20151124190950p:plain   天地否 (てんちひ)「閉塞の時」 陰と陽が半分ずつ、天地の気がまったく交わらず暗黒の時。

上下交わらず凶上下交わらず凶
否塞。時期いたらず八方塞がり。行き違い背きあいしっくりといかない。外面は強く見えるが、実態は柔弱で砂の上の楼閣のようだ。危機に直面している。なにごとも行き詰まり、無理をしても苦労ばかり。チャンスの到来を待つ以外に方策はない。情愛なく疎遠で交際がへた。先方は亢ぶる。結婚は見合わせたほうがよい。

8月 f:id:higurasi101:20151124193237p:plainf:id:higurasi101:20151124190950p:plain   風地観(ふうちかん)「観る時、洞察の時」 時の衰えを感じ始め、内省する時。

観察のとき
利欲が渦まいて秩序が混乱している。互いに決断力が乏しく様子をみている状態。
相手の出方を伺ってどう行動しようかと迷っている。岐路にたったとき、利欲に惑わされず人の模範となる行動がとれるなら咎めはない。交友を厚くしておけば先方から臨んでくる形で成立するので急がず着実に進むこと。半凶。学術頭脳派には吉。

9月 f:id:higurasi101:20151124191258p:plainf:id:higurasi101:20151124190931p:plain   山地剥(さんちはく)「剥がされる時」 時代は日暮れ、進んで事をなしてはいけない。

身を削る心配 身を削る心配
艮の山が削り取られて荒野になるさま。剥奪。心配。内向。衰退。苦労。散財。陰の勢いが強くなって陽が最後のひとつだけになった。危機が近い。身を切るような心配ごとがある。対人関係は骨折り、支障が多くて調うことがない。今までのことは諦めて次のチャンスを待てば返り咲きもありえる。

10月 f:id:higurasi101:20151124190950p:plainf:id:higurasi101:20151124190950p:plain   坤為地(こんいち)「したがう時」 すべてが陰になり、冬に向っていく。大地は養分を蓄えて次の準備をする。

大地の静かな動き
豊かな力を蓄えた大地。母。柔弱と消極。迷い。保守。衰微。女性的だが決して劣っているわけではない。消極を保つことで剛の攻撃をしのげる。勇気決断に乏しくて初めは疑いや迷いがあるが、なにごとも従順にして剛強を避ければ遂にかなう。お互いに様子を窺っていて定まりにくいが、みだりに変えずにいれば調和して吉となる。

11月 f:id:higurasi101:20151124190950p:plainf:id:higurasi101:20151124191144p:plain   地雷復(ちらいふく)冬至>「一陽来復(回復・復帰)の時」 地中奥深くでかすかに陽気が芽生えた兆しの段階。

くりかえし
一陽来復。復とは冬至のこと。元に戻る。卦は地中深くに春の陽がひとつ芽生えた形。長かった冬もあと一息だが、焦って飛び出してはいけない。雷のエネルギーもまだ潜んでいる状態で、活躍するのに充分な力はない。吉兆。希望。復興。仲直り。再婚。捜していたものが見つかる。着実にコツコツと努力すれば順調に達成する。

12月 f:id:higurasi101:20151124190950p:plainf:id:higurasi101:20151124193621p:plain   地沢臨(ちたくりん)「臨む(展望の)時」 人間の成長でいうと青年期、再出発にあたって栄枯盛衰のならひに注意すること。

相方から臨みあう
親しみあう。双方から臨みあう。求める。与える。躍進。将来性があって運気が隆盛に向かっている。互いに和合して万事順調な卦。結婚は進んで求めてよい。志操を守っていれば遅れてもかなう。希望があるとはいえ短期決戦と心得たほうがよい。急速に盛んになったものはたちまち衰えるからだ。機敏に行動して吉。

1月 f:id:higurasi101:20151124190931p:plainf:id:higurasi101:20151124190810p:plain   地天泰(ちてんたい)「天下泰平の時」 天と地の気が相交わり、新しいことが勢いよく生まれていく。

上下が和合して吉
上にある地は下がり、下にある天が昇って上下が和合する理想の卦。交わって吉。心を通じあい安定した関係を保つには誠意と用心が大切である。よい関係であっても乱を忘れずに、質素にして奢りを慎むこと。内面が充実して外面も穏やかだが安泰すぎるので堅く身を守ること。平穏。和合して悦び多し。結婚、恋愛に大吉。

2月 f:id:higurasi101:20151124191144p:plainf:id:higurasi101:20151124190810p:plain   雷天大壮(らいてんたいそう)「大いに勢い壮んな時」 時の勢いの後押しもあって大きく飛躍する。暴走しやすいので、自制心を持つこと。

盛大・勇猛・やりすぎ
好調な発展のときだが、空騒ぎの喧噪の意味もあって、外見ほどには実質を伴わない。こともある。すこし荒っぽい卦だが進展はある。勢いに乗りすぎると先方は逃げだすので落ち着いた対処が必要。ふたつの爻をひとつにみると全体で兌(若い女性)の形になり、結婚はのちに成立する。調子にのらず誠実を心がけること。

3月 f:id:higurasi101:20151124193952p:plainf:id:higurasi101:20151124190810p:plain   沢天夬(たくてんかい)「小人を決し去る時」 古きを決し、新しい時代を切り開く時。一番上の陰の爻は、力をなくした君子をあらわす。この卦の教えることがそのまま行われたのが明治維新です。

決断する
切り拓く。重大時を決行する。悪が去って正常にもどる。5本ある陽爻が増して一番上の陰爻を押し出すかたち。決断の時期がきているが、強く行動して陰の小物に仇をとられないように注意。無理なく穏やかに行動して吉。先方はたかぶって執着する象なので成立してもあとが良くない。好き嫌いが激しく和しにくい。

 

(参考文献;竹村亞希子著「超訳易経 自分らしく生きるためのヒント」角川SSC新書