家系の法則-1、ジェノグラムで分析される家族関係(1)

人間の生存の基本単位である家族が、平和で愛に満ちた基地であるならば何も問題はない。しかし、現在多くの家庭が問題を抱えて苦しんでいる。どこに原因があるのかよくわからないから、苦しみは増すばかりである。離婚、精神疾患家庭内暴力、病気、夭折・・・・。自宅閉じこもり症の人は数十万人を超えているという。日本全国病んでいる家庭だらけである。

2011年版「厚生労働白書」によれば、身体障がい児・者(在宅・施設)は約394万人、知的障がい児・者(在宅・施設)約74万人、精神障がい者(在宅・施設)約320万人、国民のおよそ6%が何らかの障がいを有しているという。

苦しみの中から、神仏に祈願された方も多いだろう。又臨床心理、精神科の門を叩いた方も多いでしょう。しかし、病状が回復した人はそれほど多くはないのではないか。それほど問題の根が深いのです。問題の原因と解決の道について考えていきます。

 

(1)家族分析手法―ジェノグラム

米国では、臨床心理(カウンセリング)を行う中で、「ジェノグラム」という方法が編み出されました。かつてブログで紹介しましたが、ジェノグラムは、三世代以上の家族メンバーと、その人間関係を盛り込んだ家系図(家族関係図あるいは世代間関係図)です。家族に関しての情報が図示されて、複雑な家族模様や病態や症状が家族の時の流れとともにどのように出来上がってきたかがわかるようになっています。ジェノグラムはマレー・ボーエンの家族システム論(1978)から派生したもので、今では精神医学、臨床心理学、ソーシャルワーク社会福祉などの分野でなくてはならないものとなっています。

現代の家族は、「両親と子ども」という原家庭でさえもさまざまな問題を抱えるのが普通であるのに、それが離婚再婚を含む家族になると、それは抱えきれないほどの問題を表面化させかねません。家族内で起きている問題が、家族間の複雑な情の関係とその結果起きている代償行為であることを突き止めて、カウンセリングのベースにするのです。モニカ・マクゴールドリック/ランディ・ガーソンの本「ジェノグラムのはなし」石川元/渋沢田鶴子訳1988年版東京図書(2008年に新装本が出版されている)をもとに概説します。家庭には次のような特徴があるといえるでしょう。

①片親家庭: 親のうちの一人だけで子どもを育てている家庭では、淋しさ、経済的問題、子育ての難しさ、親のもとを行き来する関係が生じる

② 再婚家庭: 親権、前の家庭との交流、嫉妬、えこひいき、忠誠をめぐる葛藤、継父母、親の違う兄弟という特有の問題がある

③三世代同居家庭: 両親がどちらかの親と同居している場合で、世代を越えての境界、連合、葛藤などの問題が起こる

④兄弟の順位: 兄弟の順位は、将来家庭をもった時配偶者や子どもとどういった関係になるかに影響する。一番上の子は過度に責任感が強く、忠実で、親代わりのようであり、末っ子は気ままで甘っ子が多い。長男は、親から特別の期待をかけられ、それが自負となったり負担となったりする。一人っ子は、大人と過ごす時が多いため社会性を早く身につける一方、不安にとらわれやすい

その家庭内で、個人が異常な行動を起こすということは、家族システムの平衡が保たれていないことを示しているのです。問題の根源は、異常行動を起こした個人だけにあるのではなく家族の間の相互関係にあるので、単位としての家族が治療的に介入する必要があるというのが家族システム論の考え方なのです。こうした考え方を家族に応用するのは、家族関係というものが単純なものではないからです。たとえば、母子の共生関係(べったり)の裏には、父親側の問題があったり、兄弟げんかの陰には、それぞれの親の代理戦争があるなど、交錯した家族模様は枚挙にいとまがないほどであり、十把ひとからげに扱いきれるものではありません。

家族システムを年代をさかのぼって検討し、どのようにライフ・サイクルの段階を辿ってきたかを見定めれば、現在の問題を家族発展のパターンに照らしてとらえることができるのです。前の世代からのテーマ(重圧、ルール、病気など)の伝承に反復パターンが見えてくると、「歴史は勝手にしゃべり始める」のです。

ジェノグラムは、家族の関係を表すことによってその家族のテーマを導き出してくれます。離婚再婚が多いとか子どもの死亡が多いとか未婚者が多いとか結婚が遅いとか。家族関係が複雑になると、三角関係も起こりやすくなってきます。子どもにとって、離婚や親の死によって原家族が崩壊する場合は、親を失う準備はできていないので、どんなにすばらしい継母、継父であっても、親の取替えはきかない事態となります。(下図は、家系図に書き込まれる内容です。)

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