仏教のミニ知識1-釈尊の教え

仏教のミニ知識は、ひろ さちや著の【仏教の歴史シリーズ(第1巻~第10巻)】春秋社ーを主に参考にして書いたものです。異論、反論もあるかもしれませんが、まずは複雑な仏教の全体像を知っていただくために書きました。仏教歴史を学んだことのない人には、「そういうことだったのか」という理解を助ける手助けになればと考えています。

1、釈尊の生存した時期-次の三つの説がある。
(A)BC624~BC544ごろ   (B)BC566~BC486ごろ   (C)BC463~BC383ごろ

、釈尊の生誕地:ネパールのルンビニー(ルンビニーの園が発見されたのは、1895年である)

3、父母:小国釈迦国の浄飯王(じょうぼんのう-スッドーダナ王)と摩耶夫人(マーヤー妃)の間で誕生。母は、生後7日で死去。母の妹、マハーパジャーパティーに養育される。

4、出家と悟り:29歳で出家して35歳で仏陀(悟り)となられた。

5、教え
5-1、最初の教えは、四諦(四つの真理)である
①苦諦・・・われわれの生存は苦である。一言付け加えるならば、無常なるがゆえに苦なり、である。生・老・病・死が基本的な苦(四苦)である。この四苦に加えて、a,愛別離苦、b,怨憎会苦、c,求不得苦、d,五陰盛苦(物質界と精神界の一切の事物・現象が苦である)。ここから四苦八苦という成句ができた。
②集諦(じったい)・・・苦の原因に関する真理である。自己愛があるが故に執着するのであり、苦しむのである。a,欲愛(感覚的・物質的な欲望)、b,有愛(来世の幸福を願う欲望)、c,無有愛(死後の世界の虚無を願う気持ち)
③滅諦・・・原因の滅に関する真理である。医学の方法によく似ている。
④道諦・・・方法に関する真理である。治療の段階である。八正道(実践)を教えられている。a,正見、b,正思惟、c,正語、d,正業、e,正命(正しい生活)、f,正精進、g,正念(教えを忘れないこと)、h,正定(精神の集中と解放)
八正道の教えは、基本的に出家者に対する教えである。

5-2、在家(一般人)への説教
ベナレスの富豪の息子、人生に煩悶し懊悩していた青年ヤサに説教したのが最初であるとされている。「青年よ。ここに来るがよい。うとましさを脱した安らかな境地を教えてあげよう」と呼びかけられた。
釈尊は、順を追って説法された(次第説法)。
①施論ー他者への施し、布施についてである。布施は慈善とは違う。慈善は、他人のためにする行為であるが、布施は自分のためにする行為である。仏教は、自分の大切なものを人にもらっていただく。そうすることによって自分の気持ちが安まるから、お布施をさせていただくのである。「相手がありがとうというべきだ」という考え方は、相手を乞食扱いしている。布施の功徳を積むことによって、心が浄らかになる。正しく世界を見られるようになる。
②戒論―基本的な戒として五戒を説いている。五戒は、命令ではない。a,不殺生戒、b,不妄語戒、c,不偸盗戒(ふちゅうとうかい)、d,不邪淫戒、e,,不飲酒戒(ふおんじゅかい)。このような善い習慣を身につけようという意味である。そして、戒を犯したとき、素直に自分の過ちを反省して謝罪する(懺悔―さんげと読む)。自分の弱さを自覚してそれを懺悔するのが仏教者の生き方である。
③生天論―因果応報の思想
わたしたちが布施の功徳を積み、、そして戒を守って行くならば、わたしたちは必ず来世において天界に生まれることができる。逆に、わたしたちが布施の功徳を積まず、破戒をしながらなんの反省もなく、悪事を積み上げるならば、来世は必ず地獄に堕ちるという教えである。輪廻転生を信じたインド人は、未来における果報を「天に生まれる」と表現した。
この三論がわかってはじめて仏教の教理が学べるのである。
流転輪廻の世界は、地獄ー餓鬼ー畜生ー人ー天、の五つの世界が考えられている。ずっと後になって「修羅」の世界が追加されて六つになる。(六道輪廻)

5-3、仏教教団(サンガ)の律
竹林精舎の建立・寄進によって、伝道拠点が成立した。サンガは、「律」という規則によって運営された。出家者の場合、破戒の行為は罰しなければならない。最も重いのが「波羅夷罪(はらいざい)」、教団追放罪である。当初は、四波羅夷罪として、a,婬戒、b,盗戒、c,殺戒、d,妄語戒(大妄語の場合)が制定されていた。

5-4、釈尊の根本の教えは「縁起」
「縁起」というのは、この世の中に存在するいっさいの事物は、さまざまな条件によって仮にそのように存在している、といったことを教えたものである。
これあるが故にこれあり。これ生ずるが故にこれ生ず。これなきが故にこれなし。これ滅するが故にこれ滅す。(例:愛あるが故に苦あり)
釈尊は、世の中の構造が「縁起」であることを発見された。

6、釈尊入滅
釈尊は、80歳2月25日入滅された。最後の言葉は、「世はすべて無常である。そなたたちは、怠ることなく努力するように・・・・」であった。釈尊の遺骨(仏舎利)は八等分され、それぞれの国で仏舎利を納めたストゥーパ(仏塔)が建立された。